私がラジオジプシーだったころ

アメリカ文学とか映画とか。

『華氏451度 (新訳版)』

 

 前々から読みたいと思っていたのだけれど、なんとなく機会を逃していた華氏451度。新訳版が出版されたのを機に購入しました。あまりに著名な作品なのでストーリーの大筋は知っていましたが、なるほどこういうディテールだったのか、と。ジョージ・オーウェルの『1984年』もそうだけれど、こういうディストピア小説を読むと自然の中をハイキングしたくなるんですよね。長野かどこかの高地で清々しい空気を吸いたくなる。主人公が出会う少女クラリスの雰囲気もそれに近いものがあるし、自ら我が家を焼き払ったり、川を流れながら逃亡したりするシーンの本能的な部分と、完全に人間らしさを失ってしまった妻とのコントラストからもそういう感情がふつふつと湧いてきます。

 

訳文は現代的で瑞々しく、全く違和感無く読み進めることができました。昔に自分自身で訳したものを常に良いものにしていきたいという訳者の姿勢が素晴らしいと思います。