私がラジオジプシーだったころ

アメリカ文学とか映画とか。

『華氏451度 (新訳版)』

 

 前々から読みたいと思っていたのだけれど、なんとなく機会を逃していた華氏451度。新訳版が出版されたのを機に購入しました。あまりに著名な作品なのでストーリーの大筋は知っていましたが、なるほどこういうディテールだったのか、と。ジョージ・オーウェルの『1984年』もそうだけれど、こういうディストピア小説を読むと自然の中をハイキングしたくなるんですよね。長野かどこかの高地で清々しい空気を吸いたくなる。主人公が出会う少女クラリスの雰囲気もそれに近いものがあるし、自ら我が家を焼き払ったり、川を流れながら逃亡したりするシーンの本能的な部分と、完全に人間らしさを失ってしまった妻とのコントラストからもそういう感情がふつふつと湧いてきます。

 

訳文は現代的で瑞々しく、全く違和感無く読み進めることができました。昔に自分自身で訳したものを常に良いものにしていきたいという訳者の姿勢が素晴らしいと思います。

IMAX3DとTCX+Dolby Atmosを『ゼロ・グラビティ』で比較する

今年中に観ておきたい映画~と書いておきながら、まるっきり無視して再度『ゼロ・グラビティ』を観てきました。IMAXとの比較をしたいと思います。(半分仕事、半分趣味です)

 

2013年11月末にリニューアルオープンしたTOHOシネマズ・ららぽーと船橋(西館)。ここはTOHOシネマズ独自規格のTCXという巨大なスクリーンと、国内で2件しかないDolby Atmosという次世代のシネマ音響システムが導入されています。写真などは下記の記事を参考に。

合計49個のスピーカーで目を閉じていても動きがわかる「ドルビーアトモス」を導入したTOHOシネマズ ららぽーと船橋で映画「ゼロ・グラビティ」を見てきました - GIGAZINE

 

TCXとは?

TCX TOHO CINEMAS EXTRA LARGE SCREEN || TOHOシネマズ

要するに大きなシルバースクリーンです。IMAXと異なるのは縦横比ぐらいで、TCXのほうはビスタサイズをそのまま巨大にしたものと思ってよさそうです。

 

Dolby Atmosとは?

Gigazineの記事では49個のスピーカーで立体的な音響を、と書かれていますが、ドルビー・アトモスの真の魅力はちょっと違うところにあるのではないかと思います。


About Dolby Atmos - YouTube

 意訳すると、

制作者にとっては、サウンドを完全に独立したオブジェクトとして扱うことができます。

(略)

従来のチャンネルベースの考え方が直面している問題は、異なるフォーマットのコンテンツをどう供給するか、ということです。ドルビー・アトモスでは音を単一のファイルフォーマットで供給することができます。

(略)

広さやシートの位置、スピーカーの配置位置は全てのシアターで異なります。ドルビー・アトモスは、その劇場に最適な音像をつくりあげることができます。

 

つまり、スピーカーの個数やチャンネル数というハードウェアに全く関係なく、巨大なスクリーンでも、中小規模のスクリーンでも、その劇場の広さやスピーカーの配置に合わせてサウンドマッピング(サラウンドのデザイン)を行うことができるシステム、というのが重要なポイントです。非常に汎用性に優れたソリューションで、所謂オブジェクト指向の考え方ですね。これは上流(制作)から下流(上映)まで含めて皆が幸せになれる革命的なシステムだと思います。

 

さらに詳しいことは、下記リンクにある本田さんの記事で言及されています。

http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/avt/20120529_536053.html

実際のサラウンド処理は、劇場に導入されるCP850という強力なシネマサウンドプロセッサーでリアルタイムに行われるようです。(ちなみに昨日足を運んだTOHOシネマズ船橋の機材は、プロジェクターはBarco社の33000lm DLP機, サーバーはDoremi, サウンドプロセッサーはCP850だと予想しています。)

 

IMAX3Dと比較してみる

本題ですが、先日『ゼロ・グラビティ』を観た109シネマズグランベリーモールのIMAX3Dと上記TCXとDolby Atmosが導入されたTOHOシネマズ船橋を比較します。

 

映像品質

【スクリーンサイズ】

どちらも座席位置は客席ほぼ中央で比較しましたが、TCXのスクリーンサイズの方が大きい!と感じました。あくまで印象なので実際のサイズは異なるかもしれませんが、スクリーンが迫ってくる感じはTCXのほうが上です。グイグイ来ます。ただ、プロジェクターの投射比とシルバースクリーンの関係上、周辺光量落ちが気になりました。

 

【3D品質】

3Dフィルターの品質の差異なのか、TCXでは光線の入射角度によって白色の色ムラが生じていました。TOHOシネマズの3Dメガネはぺらぺらの円偏光フィルムなので、IMAXのガチガチの直線偏光フィルタと比較すると、スペックとしては劣る部分があるのかもしれません。ただ、このあたりはあくまでじっくり観ると気になるレベルであって、普通の人が観る限りでは気にならないレベルだと思います。TOHOシネマズの3Dメガネはそのぶん軽くて着けやすいデザインなので、そちらのメリットのほうが大きいと考えても良い程度。IMAX3Dのデカいゴーグルは最悪。

あと、3Dのゴーストは首をまっすぐ伸ばして観るぶんにはIMAXのほうが目立ちません。TCXのほうは字幕のゴーストがぼんやり見えてしまいます。ただ、このあたりも普通の人が観るぶんには気にならないレベルかも、、

 

【明るさ】

IMAX3Dのほうが明るいとは思いましたが、TCXでも必要十分だと感じました。

 

【その他】

解像感に関してはIMAX3Dのほうが高いと感じました。プロジェクターのハードウェアの解像度はどちらも2Kで、プロジェクター2台の画の重ね合わせ処理が加わる関係上IMAXのほうが解像感は不利になるはず。それでもDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)のマスタリング段階でIMAX側に特別な映像処理が加わっているのか、プロジェクターの投射レンズをカスタマイズした影響が大きいのか、IMAXのほうがキリッとした画だと感じました。まぁこのあたりは個人的にはどちらでもOKな程度。

 

結果:周辺光量と色ムラが少し気になるけれど、スクリーンの迫力とメガネの快適さの点からTCXの勝利

 

音響品質

Dolby Atmosのほうが音像・音響ともにクリアです。冒頭の無線通信が右側後方からささやくように聞こえてくる表現ではIMAXとそれほど大差は無いのですが、ヘルメット内での息づかい、宇宙ステーション内で火が上方から迫ってくる点、地球帰還後に湖で虫がブンブン飛び回っているシーンなどの臨場感は全然違います。耳のすぐ近くまで音がぼやけずに迫ってくる感じ。TOHOシネマズ船橋は天吊りも含めて49個のスピーカーがあるので、Dolby Atmosの効果がより明瞭に表れることが考えられます。

 

結果:Dolby Atmosの勝利

 

チケット価格

どちらも2200円。どちらも高い!

 

まとめ

あくまで私感ですが、TCX+Dolby Atmosのほうが良いと感じました。値段が変わらないのであれば、絶対TOHOシネマズに通うと思います。早く東京の西側にも出来てくれないだろうか。

 

2013年に劇場で観た映画をまとめる

  • 観たもの 時系列順

サイド・バイ・サイド フィルムからディジタルシネマへ @新宿シネマカリテ

レ・ミゼラブル @立川シネマシティ

最強のふたり @下高井戸シネマ

ジャンゴ 繋がれざる者 @新宿バルト9

アイアンマン3 @新宿ピカデリー

オブリビオン @TOHOシネマズ錦糸町

欲望のバージニア @新宿バルト9

パシフィック・リム (3D 吹替え) @新宿バルト9

パシフィック・リム (3D 字幕) @TOHOシネマズ六本木ヒルズ

ワールド・ウォー・Z @TOHOシネマズ六本木ヒルズ

マン・オブ・スティール @新宿バルト9

地獄でなぜ悪い @新宿バルト9

かぐや姫の物語 @TOHOシネマズ府中

ゼロ・グラビティ @109シネマズグランベリーモール(IMAX 3D)

 

  • 観たかったけど逃してしまったもの

ムーンライズ・キングダム

クラウド・アトラス

コズモポリス

華麗なるギャツビー

さよなら渓谷

スタートレック イントゥダークネス

 トゥ・ザ・ワンダー

凶悪

許されざる者 (2013)

ムード・インディゴ

 

  • まだ間に合う、2013年中に観ようと思っているもの

アイ・ウェイウェイは謝らない

ブリングリング

かぐや姫の物語 (もう一回観たい)