私がラジオジプシーだったころ

米国CA州在住。アメリカ文学とか映画とか。

ボブ・トマス著 『ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯』

http://instagram.com/p/hnNMfPzZdz/

 

ふらっと立ち寄ったブックオフで購入。なによりドライブ感のある翻訳が素晴らしくて、引き込まれるように読み進めることができた。

目次は以下のとおり。

  • 第1部 中西部時代
  • 第2部 漫画づくり
  • 第3部 アニメーションの新世界
  • 第4部 広がる地平
  • 第5部 そして、夢

特に面白いのは第1部の中西部時代で、ウォルトがいかに苛烈な少年時代を送ったのかが描かれている。青年になり、第1次世界大戦に志願してヨーロッパに行くくだりはまるでヘミングウェイの小説みたいだった。アメリカに帰ってきて漫画を書き始め、アニメーションの世界を作り上げていく過程もとてもドラマチックで、業界で伝説にすらなっている詐欺師に引っかかったり、相棒ともいえるアニメーターを買収され引き抜かれたりもする。苦労して作り上げたアニメーションは芸術として高い評価を得るのだけれど、ウォルト・ディズニーランドを立ち上げるまでは経営が安定していなかったというのも初めて知ったし、ウォルトが鉄道オタクだったというのも驚きがあった。また、兄のロイ・ディズニーがどれだけ重要な人物だったのかということも理解できる。彼なしでは、ほとんど何も成し遂げられなかったのではないだろうか。

 

この本自体は現在絶版になっているようなので、多くの人が読める機会が少ないのが残念だと思う。図書館や古書店で見かけた際は是非手にとってみて下さい。

『ゼロ・グラビティ』を観た

映画『ゼロ・グラビティ』オフィシャルサイト

 

アポロ13』のようにサバイバルする物語なのかと思っていたけれど、良い意味で裏切られた、全然違った映画だった。所謂ハリウッド映画の宇宙モノとしての物語を期待した人にとっては面白くない映画だったんじゃないかと思う。先に挙げた『アポロ13』や『アルマゲドン』みたいに、家族や恋人との愛を中心に据えながら、地球の多くの人たちを描きながら、主人公たちが困難を乗り越えて感動の結末を迎えるという万人に分かりやすい展開ではなく、かといって『コンタクト』のように技術的なリアリティを背景にしながらも、宇宙の(宗教的とも言える)神秘性をテーマとしたサイエンス・フィクションになるわけでもない。

 

アポロ13 [Blu-ray]

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アルマゲドン [Blu-ray]

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コンタクト [Blu-ray]

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  • じゃあなんなのよ?

もちろん現実的な計算の元に制作された精緻な無重力の映像・音の表現は素晴らしいし(真空なのに音というのも変な話だけど)、3Dの映像品質も高いのでどうしてもそこに目が行きがちだけれども、物語の観点から見ると、この映画は宇宙の話ではない。地球と地球の重力圏に生きる生命の話だ。 

邦題では『ゼロ・グラビティ』と改変されてしまっているけれども、オリジナルのタイトルは『Gravity』である。宇宙空間での無重力の映像表現を売り物にした映画にもかかわらず。なぜならば、それこそが物語の本質だからだ。

 

劇中の表現でも、そして勿論現実にも、宇宙は地球圏の生命にとって殆ど無謀とも言える空間だ。生身の体では血液は沸騰し、一瞬でドライフラワーのごとくミイラになってしまう。散弾のように軌道を周回するスペースデブリは秒速8km以上の速度でスペースシャトルを(ときには人をも)打ち抜く。主人公はその絶対的な否定の力に打ちのめされ、自死さえ考える。

しかし結局は、生命への渇望から地球の重力のもとに還ってくるのだ。地球に帰るという決断とそこからの奮闘のくだりは完全にフィクションだけれども、それを指摘するのは野暮ってもので、素直に楽しめばいいものだと思う。(ただ、ちょっと蛇足だと感じたのは中国の宇宙ステーションと宇宙船の話で、このあたりは最近のワーナーの中国市場重視の戦略なのかな、と思ってしまった。物語としてはあのくだりは必要ないかな。)

 

  •  まとめ

この映画の素晴らしいところは、全ての生命を否定する宇宙空間と、重力を以て生命を庇護する地球との対比の表現だ。「母なる地球」とはよく言ったものだな、と思う。多くの人がそのことを感じ取ってくれるといいのだけれど。

伊藤製作所のTシャツ

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戦うTシャツ屋、伊藤製作所で購入したものが届きました。

http://www.ito51.net/

 

同梱の伊藤製作所新聞 vol.28にはこうあります。

「目先の損得にこだわると長期的には損失をこうむる -ネコ」

 

ネコのエサには惜しまずロイヤルカナンを投入しましょう。