私がラジオジプシーだったころ

アメリカ文学とか映画とか。

祖父と腕時計のクロニクル

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二十歳になったばかりの祖父が焼け野原の東京を四ッ谷から新宿に向かって歩いていたそのときからさらに十数年後、僕の父が生まれた年に祖父はこの腕時計を購入したという。

諏訪精工舎製 Seikomatic。現在の値段にして十五万円ほどのもので、先の戦争で父(僕の曾祖父)を亡くして一家を支えることに必死だった祖父にとっては高価な買い物だったはずだ。

 

さらに数十年後、両親が離婚して僕と姉が母に連れられて当時住んでいた家を出ることになった日、祖父はこの時計を僕に手渡して言った。 

「いまはまだこの時計の価値が分からないだろうが、そのうち必ず理解できる。お前は賢い子だ。将来ハーバードに行くんだから、これくらいのものは身につけておかないとな。」

 

二十年後、僕はハーバードには行かなかったけれど、この時計を大切に使い続けている。文字盤に少しくすみはあるけれど、シャープな外観は全然古くさくないし、その中で動く機構だって半世紀前と全く変わらない精度を保っている。

祖父の大いなる愛は、戦後の機械工の傑作のなかに息づいている。

 

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フィクションです。こんなストーリーを想像してしまうほどの腕時計を購入することができました。

買ったのはここ。家から歩いて5分のところにあるビンテージ時計屋さんです。

http://loclock.jp/

 

昨年から豪徳寺に店を構えるようになり、今年の春頃から看板を掲げるようになったそうです。三ヶ月ほど前からずっと気にはなっていたんですが、豪徳寺ってこういう一見さんが入りづらい雰囲気があるお店が多いんですよね。前を通りがかったときにチラチラ見ているだけでしたが、やっと本日、意を決して入ることができた次第です。

店内には六十~七十年代のSEIKOやオメガ、その他スイスのビンテージ腕時計がずらり。どれもこれもセンスがよいうえにお手頃価格!

 

たぶん僕とあまり歳も変わらないであろうご主人(時計技師でもある)にいろいろ教えてもらった結果、機械時計初心者ということもありメンテナンスの利を考えてSEIKOにすることに。高品質なバンドも自由に選べて一万八千円という価格で、この夏よりお小遣い制に移行した僕にとっては本当に有り難い買い物でした。

 

WEBでの販売もされているので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。